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肥前春日流春日会

比較から見える肥前春日流の面白さ モーションキャプチャー3回目

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比較から見える肥前春日流の面白さ モーションキャプチャー3回目

  8月23日、門弟M君の申し出により、三度目のモーションキャプチャー撮影が行われました。
検証技法は、肥前春日流の基本操体である「練」のうち「櫓練」と「巻練」、柔術基本技法である「一之波」と「挙げ崩し」の4本。
今回は、M君の修士論文作成のための予行演習を兼ねており、「比較」がテーマの軸となっています。


最初の検証は、稽古錬度による比較。
杖を持って一人で行う基本操法「櫓練」を、宗家と、3人の門弟でそれぞれ比較してみます。

実際の測定数値を表示できないのが残念ですが、その差は明確でした。
宗家の「櫓練」は、体重移動が非常に滑らかで、前後の足の地面反力もなだらかに推移していました。さらに特徴的だったのは、体の各部位と杖の両端につけたポインターの描く軌跡が、非常に美しい円を描きながら同調していた点。
 
対して、比較対象となった葎・葛女史・杵君の門弟3名はいずれも、宗家とは段違いの歪な測定結果になってしまいました。

 皆一様に、体重が移動する過程で重心を示す数値が急激に上下しており、これは脚部のリキみが抜けていないことを表しています。
また、各部位のポインターも単純で直線的な前後運動となっていて、円転の動きを作り出せていない事が明らかになってしまいました。
と、突きつけられた現実は非常に苦いものでしたが、面白かったのは、3人の差異。それぞれが宗家には遠く及ばないながらも、稽古歴が長いものほど、少しずつ宗家の動きに似た測定結果が出ていたのです。
皆伝への道のりは遠くとも、積み重ねた稽古は必ず上達へとつながる――真剣に稽古に取り組む大切さを、科学が教えてくれたように思います。


続いての検証は、筋力による瞬発的運動と、肥前春日流技法による効き目の比較。
これは、基本操法である「巻練」と、
柔術 「一之波」
 
「上げ崩し」 

を、掛ける側ではなく受ける側の変化を測定することで、作用の質を比べてみよう、と言うことになりました。

いずれも、私が被検体となり、宗家と杵君の業を受けます。さらに、杵君にはただ力任せの動きと、肥前春日流の技法による動きの2パターンを実施してもらいます。
これにより、宗家:門弟の錬度比較と、業:力任せの比較を行ってみよう、という狙いでした。
さて、その結果ですが……
なんとも、表現の難しい測定結果になってしまいました。
確かに、測定結果そのものに違いは現れていますし、業を掛けられたときの感覚もまったく違います。で、ありながら……自身の感覚と、測定結果がうまく一致しない。

肥前春日流の稽古では、力のぶつかりを生まないことが大事だとされます。
柔術であれば、業を掛ける側は組んだ相手が「居ないかのように」動くことを良しとし、受ける側は支えどころが無いままに体のバランスを失ってしまう――そんな境地を目指して稽古をします。
宗家の業を受けたとき、私はまさにそのような感覚になっているのですが、これをモーションキャプチャーで測定した実際の波形と並べて説明しようとすると、いささか混乱が生じてしまうのです。

このあたりは、私がどうこう論じるよりも、研究者であるM君がいずれ上手くまとめてくれることに期待をすることにしましょう。


ともあれ、3回目の測定となるモーションキャプチャー、今回も興味深く楽しく取り組ませていただきました。
M君の研究に貢献させてもらうのはもちろんの事、稽古へのフィードバックや教本作りにも活かせていければ理想だと思っています。


余談ですが、今回の測定方針を決めるに当たり、事前にはちょっとした議論がありました。
肥前春日流の妙味とは?
技法の成立過程と社会的・歴史的背景との相関性は?
現代のスポーツと肥前春日流の違いとは? 或いは共通性とは?
いろいろと論を交わす中で、宗家から興味深いお話をいくつもお聞きすることができました。
そのあたりについては、次回の記事で少し触れてみることにしましょう。

- 葎 -

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肥前春日流は佐賀県発祥の流儀で、武術と作法を中心とした武家の文化を学ぶ場として大阪で活動しています。

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